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だまし

2006.02.02

nikkei 060202

相場は、地味ですが堅調な値動きが続いています。

日経平均株価は、年初から昨年来高値を更新していたものの、16500円を手前に上値が重くなっていました。そして、株価はそこから急落し、15000円割れ寸前まで到達します。

しかし、その水準から急反騰すると、またたく間に急落前の水準に値を戻すだけでなく、昨年来の高値を更新。個別銘柄を見ても、主力銘柄は急落前の水準をいち早く取り戻し、さらに上値追いの態勢に入っています。

結局、新興市場が、下に取り残された格好。1月の急落は、それまで急騰続きだった新興市場の調整をうながしたというのが、本当の意味だったようです。

そのため、新興市場は今もっておとなしいまま。このあたりも、株価が上がっている割には、相場が何となく地味な印象を受ける理由かもしれません。

それでも、主力銘柄が上昇していることは、株式市場に中長期の資金が継続て入ってきていることを反映していますから、悪い相場ではありません。

ところで、この急落のさなかに、密かに気になっていることがありました。それは、1月末の株価水準です。

実は、ITバブル時の最高値である20833円(2000年4月12日)~バブル崩壊後の最安値7603円(2003年4月28日)までの下落幅の61.8%戻し水準は15780円です。

この61.8%については以前お話しましたね。黄金分割比とか、フィボナッチ比と言われる比率です。株価が修正するとすれば、ここまでの相場の戻りが最もバランスが良いとされています。

実は、なぜ61.8%戻しが大切かといえば、仮にここを突破すると、次の目標は100%戻し、すなわち全値戻しとなるからです。日経平均株価で言えば、ITバブル時の高値20833円が目標値のリストに入ってくるからです。

とは言え、株価の動きに絶対はなく、一旦突破した61.8%戻し水準を再び下回ってくるということはしばしば起こります。これを「だまし」などと言います。

実は、日経平均株価の61.8%戻しの水準は、昨年12月には一旦上回っていました。しかし、先月は再び下回る場面がありました。

61.8%戻しを達成したのですから、本来は20833円方向に行かなければなりません。しかし、株価は61.8%水準を下回ってしまったのです。だましの発生です。

これを見て、テクニカル分析はなんていい加減なんだろうと思われるかもしれません。61.8%戻しを超えたら100%戻しだと教えながら、再び61.8%戻し下回ってくると、そのテクニカルのサインは間違いだったとか、「だまし」だったと言うのは無節操な気もします。

となると、そんなものに従うのは意味ないということになりますね。実は、このあたりが、テクニカル分析が好きになるのか嫌いになるのか、あるいはテクニカル分析派になるのかどうかの境目かもしれません。

そこで、テクニカル派になるかどうかは別として、少なくともテクニカル嫌いにならないための方法を考えましょう。

まず、61.8%戻し水準の突破は、全値戻しになるということを保証するものではありません。しかし、少なくとも、61.8%戻し水準を上抜けば、しばらくは上昇トレンドが続くということは言えます。

というのも、61.8%戻し水準は、本来は強力な売りのゾーンだからです。ここでは、黄金分割比などを使う投資家の戻り売りが待ち構えています。その中で61.8%戻し水準を突破したということは、このまとまった戻り売りをこなしたということ。

だとすれば、そこから上の株価水準は、しばらくは無風状態が続くでしょう。そこでは、戻り売りも限られているはずですから。そういう意味では、61.8%戻し水準を本当に突破した、すなわちまとまった売りをこなしたということは、次の大きな上昇につながるということです。

そして、うまくいけば、次のまとまった売りが出るところは100%戻し水準。ですので、61.8%戻しを突破できれば、次は100%戻しが目標になるのです。

ということで、理屈の上では、61.8%戻し水準を超えると、しばらくは順調に上値を伸ばしていけそうな気はしてきます。

ただし、ここで問題になるのは、やはり「だまし」があることですね。これについては、はっきりしていることは、避けることができないということです。

ただし、先ほどのように、61.8%戻し水準の突破が買いシグナルとして使えるのなら、このダマシのために、そのすべてにダメ出しをするのはもったいないですね。

そこで、このダマシへの対策を考えます。2つの方法があります。

1つは、ダマシだと思ったらロス・カットすること。61.8%戻し水準を超えたとしても、再びその水準をはっきりと下回ったら、損失確定の売りを出すことです。

確かにこれで損は出てしまいますが、狙っているのは61.8%戻し水準を超えたことによる大きな相場の上昇です。ということで見れば、小さな損失に対し大きな利益の可能性なので、トライしてみてもいい戦術ですね。

もう1つは、だましに遭わないように、61.8%戻し水準を突破したかどうかをできるだけ慎重に確認することです。

たとえば、日経平均株価は、昨年12月の終値は16111円でしたから、すでに61.8%戻し水準の15780円を上回っていました。

しかし、ここでは、まだ飛びつきません。大きな下落相場に対する反発なのですから、1回61.8%を超えたくらいではまだ信用しません。ですので、問題は1月の終値でした。これが再び61.8%戻し水準16780円を突破するかどうかです。

案の定、1月の株価は急落し、せっかく上回った61.8%戻し水準を下回ります。ですが、問題は最終的にどうなのかでした。最終的に、61.8%を突破できるのかどうか。

そして、1月の終値は16649円。この月も、61.8%戻し水準を上回りました。しかも前月よりも終値は上昇しています。

とすると、慎重に見たとしても、ITバブルからバブル崩壊後の最安値までの61.8%戻し水準は突破したと判断すべき状況でしょう。

そうだとしたら、全値戻し20833円が次の大きなゴール。これに向ってどこまで近づけるかは分りませんが、少なくとも長期では株式は買いを継続する状況と言えそうです。

(トレーダーズ・アンド・カンパニー 廣重勝彦)